歩きながら詩を書いている。海の中に浮かんでいて、これは、残さなければいけないと思ったから。風を感じている。生きている心地がする。見渡す限りの海に、船と自分が浮かんでいる。点在する小さな島々をたどって振り返ると、そこに見えるのは、海と空、その中にいる小さな自分が、「自分」であって「世界」である。自分だって、世界の一部。

自分は、どこにいるんだろう。橋を渡り、歩きながら、遠ざかっていく。でも、前へと進んでいる。それは過去に戻るのではなく、かつての道をたどりながら、未来へ進むということ。今までに行われてきたことを、もう一度見つめ、見直している。海と草と松と雲、そして人工的に作られたものたちが、それだけで存在している。その中にいる自分が今、話していること。それが、広大な世界と自分とをつなぐ接点である。

生まれてきたことの意味。今、こうして五感を通して感じていることの意味。それは、わからない。ただ、歩きながら、自分と世界をつなぐ橋の上を、一歩ずつ、進んでいる。どこに向かうのかは、わからない。陸の上に聞こえる、蝉の声。鳥の声。そして、自分の声。海の音。カニが歩く音。すべてが、ある。何もないけれど、すべてがある。自分がいる。ただ進んでいく。進んでいる。何をしに来たのかは、わからない。感じに来ただけ。ただ、感じに来ただけ。感じているだけ。それだけ。何もない。すべてがある場所に、何もない。自分が、いるだけ。

2025.7.22 大越智哉 / Tomoya Okoshi